雑草はなぜそこに生えているのか

どんな本?

雑草魂という言葉が使われるように、雑草は強い植物と思っている人が多いでしょう。

雑草は踏まれても踏まれても立ち上がると。

でも、逆です。

雑草はホントは弱い植物だ。

というのが本書の見方。

弱いからこそ、踏まれても立ち上がるという根性論ではなく、したたかに生きている植物なのです。雑草は、踏まれたら立ち上がりません。

よく踏まれる場所に生えている雑草は良く見ると、踏まれて倒されたままの状態で、地面に横たわっています。

倒されたからといって、立ち上がるとムダにエネルギーを使ってしまう。

雑草にとっての最重要事項は、花を咲かせて種子を残し、世代をつなぐこと。

それ以外のことはどうでもいいのです。

踏まれて倒れながらも、どうやって花を咲かせようかと雑草は考えているのです。

だから、雑草は強いというより、したたかで、たくましい植物なのです。

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本書は、前著「弱者の戦略」から、雑草に絞って執筆されたスピンオフ作品のような本です。

内容的には前著とほぼかぶっているし、「弱者の戦略」は植物だけでなく、生物中心の著作で、こちらの方が読みごたえがあります。

本書で最も面白かったのは「おわりに」で述べられている稲垣先生のこれまでの歩みについて。

雑草の研究者ってなかなかいそうにないので、「なぜ雑草の研究をはじめたのか」は気になっていたのですが、その理由がここに述べられています。

小さい頃から雑草が好きだったわけではないが、高校の卒業文集に「気分はカラスムギ」と植物のたくましさを書いたらしく、「雑草」という言葉には興味があったのかもしれない。

高校時代は友人の影響で学者になるのがカッコいいと思っていた。

バイオテクノロジーが注目された時代だったので、植物学を勉強するために理学部に行こうかと考えていた。

しかし、志望校に手紙を書いたところ、「理学部ではなく、農学部に行った方がよい」と返事がくる。

そして農学部に入学し、作物学を専攻。

研究室でイグサに興味を持つ。

針のような葉だけを突き出した奇妙な姿に興味をそそられた。

あるとき、イグサの観察をしていると、鉢のすみにイグサとは異なる芽が出てきた。

雑草である。

この雑草がどのような成長をするのかが気になって仕方なくなった。

これが雑草に興味を持った最初だそうです。

そこから3人の恩師との出会いを通じて、雑草研究にのめり込んでいったということです。

しかし、大学を卒業してから雑草学を仕事としたわけではなく、農林水産省に入省し官僚になります。

雑草とは何の関係もない仕事でしたが、仕事で疲れ果てたときに励ましてくれたのが、たくましく生きる雑草の姿でした。

農林水産省で仕事をするうちに、一度しかない人生であれば、研究をやってみたいという気になり、故郷の公務員試験を受けなおし、県の職員となります。

ここで、県の研究機関に行きたかったけれど、担当になったのが、畜産の指導員。

牛もまともに見たことがないのに。

しかし牧場で困っていたのが雑草対策。

その後、県の研究機関に異動になったものの、雑草の研究に取り組んだというわけではなく、新しい品種の育成やら、バイオフォトンの研究やら、土壌肥料の研究やら、害虫防除の研究やら、まともに雑草の研究をしていたことはありません。

道草ばかり。

それでも、不思議なことに、振り返れば何一つ無駄なことがないと感じたそうです。

花の育種の研究では、早く成長するという雑草のユリの特性を活かして早く咲くユリを育成したり、バイオフォトンが雑草の除草剤反応の計測に使えることを見出した。害虫退治も、餌となる雑草を退治すれば劇的に減らすことができた。
雑草学という軸足を持っていたおかげで、どんな分野でも思い切って研究をして成果を得ることができたように思う。サッカーボールを蹴るときも大切なのは蹴る方の足ではなく、軸足である。「雑草学」が私の軸足だった。この軸足があるから、私にとってはどんな勉強も、「雑草学」を深めるものだったのである。
もし、私が大学を出て、そのまま希望どおりに雑草の研究者になっていたとしたら、すごく視野の狭い雑草オタクになっていたことだろう。

これまで、思い通りにならなかったことも、失敗したことも、人生で起こることに無駄はないと思えるようになりたいですね。

ピックアップ

●野生の植物が全滅せずに長い時間、世代をつないでいくためには、優れた形質を選び抜いて揃えていくことよりも、個性ある「多様性」を維持することが、大切なのである。

●植物にとってもっとも重要なことは何だろう。それは、花を咲かせて種子を残すことである。雑草はここがぶれない。どんな環境であっても、花を咲かせて、種子を結ぶのである。種子を生産するという目的は明確だから、目的までの道すじは自由に選ぶことができる。だからこそ雑草は、サイズを変化させたり、ライフサイクルを変化させたり、伸び方も自由に変化させることができるのである。

●雑草は他殖をしながらも、自殖という保険を掛けておくのだ。どちらかの選択肢を選ぶのではない。常に複数のオプションを用意しておくのが、雑草の戦略なのである。

●雑草とは、いまだその価値を見出されていない植物である。

●雑草が持つさまざまな特性は、うまく利用すれば役に立つのではないか、そんな視点の研究もある。たとえば、雑草の中には乾燥に強いものがある。それらの雑草は砂漠の緑地化に利用できるかも知れない。

目次

第一章 雑草とは何か?
第二章 雑草は強くない
第三章 播いても芽が出ない(雑草の発芽戦略)
第四章 雑草は変化する(雑草の変異)
第五章 雑草の花の秘密(雑草の生殖整理)
第六章 タネの旅立ち(雑草の繁殖戦略)
第七章 雑草を防除する方法
第八章 理想的な雑草?
第九章 本当の雑草魂

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