「最強!」の書く技術

どんな本?

受験現代文のカリスマ予備校講師である出口汪(でぐち・ひろし)さんが、ビジネスパーソンに必要な論理的な文章を書くための基礎を解説した本。

文章の書き方というより、書く前に必要な「論理についての知識」に重点が置かれている。

2015年12月発行。

所感

論理好きの出口さんらしい本。

「はじめに」を読んだときには「ん?」と違和感がありました。

●本書は今までの「文章術」「書く技術」「ライティング」の本とはまったく異なります。

こういった類の本は手書きのための技術を論じているが、現在ではメール、ブログ、フェイスブック、ラインなどデジタルデータで書くことが主流。

現代の私たちは不特定多数の読者に対して書いている。

そのために不可欠なのが「論理的に書く技術」

というような内容が書かれているのですが、

手書きのための技術とデジタルデータとして書くことの何が違うの?

不特定多数の読者に対して書くことと論理的に書くことにどんなつながりが?

と、頭の中に大きなはてなマークが浮かんだのです。

なぜなら、手書きで書くにしたって、ビジネス文書では論理的に書くことが必要では?と思ったからです。

最初で違和感を持ってしまったので、読み進める気力が萎えたのですが、それでも読み進めていくうちに、さすが出口先生!という納得感に変わっていきました。

本書では第4章で「論理的な文章を書く技術」の解説をしていますが、そこに至るまでの「論理」についての説明が非常にわかりやすく書かれています。

第3章までの内容としては次の通り。

論理的に書く技術のために必要な論理は3つしかない。

その3つとは

「イコールの関係」・「対立関係」・「因果関係」。

「イコールの関係」・「対立関係」について

「男」という言葉には、「イコールの関係」と「対立関係」が含まれている。

・「個別具体的な男」 = 「抽象的な集合としての男」というイコールの関係

・「男」という言葉があるからこそ、意識される「女」という対立関係(男 ⇔ 女)

「因果関係」について

・風が強いから、建物の中に入る

AだからB
AなぜならB

この3つの論理がなぜ必要になるのかというと、文章で自分が伝えたいことには「論証責任」があるから。

なぜ「論証責任」があるかというと、自分の主張は全員が共感できるものではないから。

自分の主張を論証するときに、この3つの論理が必要になる。

①「イコールの関係」には次の4つがある。

・具体例

・体験

・引用

・比喩

比喩も立派な論理の一つ。

抽象的でわかりにくいことを、身近なものに置きかえるときに、「たとえる」という論理的手法を使う。そのとき、「たとえるもの」と、「たとえられるもの」との間には「イコールの関係」が成立している。

比喩には書き手の思考力を鍛え、感性を磨き上げる効用がある。

比喩を身に付けるには、文学作品を読む必要がある。

何もない状態から頭の中で考えても、思い浮かばない。

たくさんの事例をストックするのが大切ということですね。

②「対立関係」

対比・譲歩

あなたの意見はもっともだ。しかし~

弁証法を使って、Aという意見と、それに対立するBという意見から、お互いの長所を活かし、欠点を補う。

③「因果関係」

AだからB

AなぜならB

の構造を意識する。

ここまでが第3章の内容。

第4章では具体的に文章の書き方が説明されます。

実際に論理的な文章を書くには「設計図を作成」する必要がある。

この設計図の作成方法もまた論理的で秀逸です。

多くの文章術の本でも書く前に設計図を作りましょうという話は出てきますが、ここまで明快に論理的に作る方法が書かれた本は今まで見たことがありませんでした。

例として、

・勉強が本来楽しいもの(遊び)。勉強を本来の遊びに戻すべきだ。

という主張を論証するための文章を書くための設計図の作り方が解説されています。

【設計図】

「仕事」 生産性・有効性・効率・未来志向・不自由 → 人間性の疎外


「遊び」 楽しいかどうかで、生産しない・現在志向・自由 → 人間性の回復

【話題の転換】

勉強 = 本来は遊び = 自由・現在志向・有効かどうかではない

(具体例)ギリシアの貴族・平安時代の女房

本来遊びであるはずの勉強が、今や仕事に変わってしまった(人間性の疎外)

【結論】

勉強を本来の遊びに戻すべきだ

ここで「なるほど!」と思ったのが次のこと。

まず「仕事」ってどんなイメージがあるか?ということで

生産性・有効性・効率・未来志向・不自由

と書き出しています。

次に「遊び」についてもどんなイメージがあるかを書き出すのですが、私なら「遊び」についても頭の中に浮かんだ言葉を書き出します。

しかし、ここで出口先生は「遊び」についてのイメージを書き出すときにも

「仕事」のイメージとして書き出した

生産性・有効性・効率・未来志向・不自由

に対立する概念を書き出すように説明しています。

イメージするときにも「自由に」ではなく、論理的にイメージすると言葉が出やすいなと感じました。

この設計図に従って作成した実際の文章例も掲載されていて、

設計図を実際の文章にする流れもよくわかります。

最後の第5章では論理的な文章を書くためのトレーニング法が書かれています。

その方法とは

ステップ1.論理を意識して日本語を使うこと

ステップ2.論理的な文章を読むこと

ステップ3.ストックノートを作って論理的に書くこと

この3ステップです。

ストックノートは

左のページに、論理的な文章を読んで、その要約を記入し、右のページにそれに対する自分の考えを書くというもの。

だから左ページは筆者の言葉で、右ページは自分の言葉でまとめる。

そして、ことあるごとにストックノートを見返すこと。

結局のところ、一足飛びに論理的な文章を書けるようにはならないということですね。

最初の頃は、文章の要約はできたとしても、なかなか自分の考えを書くことが難しいかもしれません。

しかし、出口先生は言います。

自分の考えが何も浮かばなければ、自然と自分の考えが浮かぶまでは右のページは白紙でOK。

その代わり、左ページの要約を何回も読み返すこと。

それらが消化されてくると、やがて自然と頭の中に自分の考えが沸き上がってくるようになるとのこと。

そう考えれば、気楽に始めることができそうです。

何度も読み返したい本です。

目次

第1章 なぜこれからの時代に「書く」ことが大切なのか
第2章 あなたの文章は誰もわかってくれない
第3章 一文は論理でできている
第4章 論理的な文章の書き方
第5章 文章力を鍛える実践的な方法

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