語彙力こそが教養である

どんな本?

明治大学文学部教授でテレビのコメンテーターとしてもおなじみ齋藤孝先生による、語彙力をアップさせる方法についての本。

2015年12月発行。

具体的には次のようなことなどが書かれています。

■この人、頭いいなと感じるのは語彙の豊富な人

■日本人の語彙力が低下している理由

■語彙力を鍛えるための正しい大人の勉強方法とは?

■語彙力をつけるための読書のもうひとつのメリット

■コスパ最高の文学はドストエフスキー

■ネット上の語彙の宝庫とは?

■テレビで語彙を増やすために見たいジャンルは?

■インプットした語彙を使える語彙にするためのトレーニング法

■日本語をマスターするには、夏目漱石

■語彙トレは一朝一夕にならず。漢方薬のようなもの。

所感

何度も読み返そうと心に誓った本です。

私は

「自分の意見、考えを人にわかりやすく伝えたい」

「感動した映画や本の話、体験したことを、人に面白く伝えたい」

と思っています。

思っているということは、今できていないということです。

自分の意見を人に伝えたいという以前に、頭の中がグルグルして、自分の考えがまとまらないというのが実情です。

今まで、「伝え方」が下手なんだと思っていたので、「伝え方が9割」など、「どう伝えるか」という本を読んでいました。

しかし、一向に伝える力がついたとは思えません。

それはなぜか?

本書がその理由を教えてくれました。

●思考は、頭のなかで言葉を駆使して行われます。つまり、何かについてじっくり考えて意見を持つためには、先にたくさんの言葉をインプットすることが必要不可欠です。

意見を伝えられないのは、伝え方がダメなのではなく、そもそも考えがまとまっていなかったということに気づきました。

なぜ考えがまとまらないか?

それは考えるための道具である「言葉(語彙)」が少なすぎるからではないか?

というのが、本書を読んだ時に出てきた仮説です。

では、語彙を身に付けるためには闇雲にインプットすればいいかというとそうではなく、まずは語彙の先生を決めること。

●「日本語の表現者で影響を受けた人は誰ですか?語彙の先生は誰ですか?」

きっと、この質問に答えられる人は多くはないでしょう。けれど、1年後、誰かしらの名前を挙げられるようになっていれば本書を読んだ意味がある。そう断言できるくらい、「語彙の先生」がいることは大切なのです。

この記述を読んだ時、「よし、1年後に自信を持って名前を挙げられるようにしよう!」と思いました。

問題は誰を先生にするかということです。

本書では語彙が豊富で考え方も角度のある「すごい人」がたくさん紹介されています。

挙げられている人物を列挙すると

夏目漱石、三島由紀夫、みうらじゅん、リリー・フランキー、辛酸なめ子、能町みね子、シェイクスピア、太宰治、川端康成、寺山修二、坂口安吾、水野敬也、ドストエフスキー、ダン・ブラウン、アガサ・クリスティー、ドナルド・E・ウェストレイク、ジャネット・イヴァノヴィッチ、W・アイリッシュ、レイモンド・チャンドラー、スティーグ・ラーソン、ジェフリー・ディーヴァー、高野和明、孔子、幸田露伴、谷崎潤一郎、

松任谷由実、井上陽水、桑田佳祐、スガシカオ、中島みゆき

宮藤官九郎、三谷幸喜、野島伸司、橋田壽賀子、坂元裕二、古沢良太

作家、アーティスト、脚本家さまざまな人たちです。

齋藤先生がすごいと言うのだから、まずはこの人たちのうちの誰かを先生にしようと考え、決めたのが夏目漱石です。

なぜ、夏目漱石かというと、

●夏目漱石は、日本の語彙を大きく変えた人物です。漱石以前と漱石以後では、日本語の豊かさはまったく違ったものになりました。そのひとつが、言文一致の文章。漱石の書く文章は喋り言葉と非常に近いということで、それまでの文学と一線を画しています。

●夏目漱石の何よりの魅力は表現のうまさにあります。川端康成の文章が美しく芸術的だとしたら、漱石はどちらかというと民衆的。

この記述を読んだから。

昔、「草枕」を読んだときには、つまらなくて挫折しましたが、再挑戦です。

まずは齋藤先生がおすすめする「坊ちゃん」から初めて、漱石を制覇しようと思っています。

1年後に語彙力がついたと実感することができるかどうか、楽しみです。

********

フットボールアワーの後藤さんや、くりぃむしちゅーの上田さんが得意としている「たとえツッコミ」。

比喩表現がうまいと会話でも、文章でも一目置かれます。

比喩表現の習得の方法について、本書では次のように述べられています。

●少しでも「名比喩」に近づくためには、どうすればいいのでしょうか。聞き手が「いい比喩だな」と感じるのは、映像や音、匂いが頭に浮かぶような描写です。ですから逆に、まずは表現したいイメージを明確に浮かべ、そのイメージを言葉に落とし込んでいきましょう。

この部分を読んだときに思い出したのが、「芥川龍之介に学ぶ文章の基本」という本。

この本は、芥川龍之介の名作に使われている表現をパターンとして学習しましょうという主旨の本です。

その中で、「匂いを入れる」というパターンでは「蜘蛛の糸」から

何ともいえない好い匂が、絶間なくあたりへ溢れております。

という表現が抜粋されており、

「音を入れる」というパターンでは「杜子春」から

一株の松が、こうこうと夜風に鳴る音だけです。

という表現が抜粋されています。

比喩表現を作るのに、「まずは表現したいイメージを明確に浮かべ、そのイメージを言葉に落とし込んでいきましょう。」と言われても、表現力のない私の頭は動き出しません。

まずは名作と呼ばれる文学作品の上質な比喩をたくさんストックしていくのがスタートだなと感じます。

またもうひとつの比喩の作り方として「ずらす」という方法もあります。

「鳩が豆鉄砲を食ったような顔」という慣用句を参考にして「お預け中の犬みたいな顔」という表現をを生み出す方法です。

このやり方ならいろいろ発想できそうです。

さらに次のようなやり方もあります。

●自分が精通している特定の分野に集中して比喩を作り出す試みは、じつはとても効果があるんですね。お酒が好きなら、「ロマネコンティで赤ワイン煮をつくるくらいもったいない話だ」。

野球を題材に「仕事はツーアウト満塁から」など。

いずれにしても、比喩表現もインプット→アウトプットの繰り返しでしか身につかないということですね。

ピックアップ

●語彙が豊かになれば、見える世界が変わる。

●思考は、頭のなかで言葉を駆使して行われます。つまり、何かについてじっくり考えて意見を持つためには、先にたくさんの言葉をインプットすることが必要不可欠です。

●日本語の90%を理解するために必要な語彙数は、およそ1万語と言われています。ところが、諸外国を見てみると、ケタが違う。英語は日本語の3分の1にも満たない3000語、スペイン語やフランス語にいたっては2000語足らずで、その言語を90%理解できます。

●なぜ日本人の語彙力は低下してしまったのでしょうか。その原因は、素読文化の減衰にある、と私は考えています。

●意味より先に音と言葉に身体を慣らすという、文字通り「習うより慣れろ」の素読。じつは、語彙習得のいちばんの近道なのです。

●「日本語の表現者で影響を受けた人は誰ですか?語彙の先生は誰ですか?」

きっと、この質問に答えられる人は多くはないでしょう。けれど、1年後、誰かしらの名前を挙げられるようになっていれば本書を読んだ意味がある。そう断言できるくらい、「語彙の先生」がいることは大切なのです。

●「すごい人」のアウトプットから語彙を頂戴し、インプットすることに意味があります。角度を持っている人は、その角度をアウトプットするための語彙も同時に持っているもの。だから、私たちもそのアウトプットした言語を借りることで、ものの見方の角度をトレースできる。トレースを続けるうちに、すっかりその人になりきることができるのですね。

●私はエッセイを読むのがとても好きで、なかでもみうらじゅんさんやリリー・フランキーさんは別格の面白さがあると感じています。

●人気エッセイを書く人たちの持っている思考の角度や言葉のセンスは秀逸で、変わった造語をどんどん作り出していきます。しかもその造語のリズムもよく、思わず繰り返しつぶやきたくなるようなものばかり。みうらじゅんさんの造語で「マイブーム」「ゆるキャラ」といった言葉はもう完璧に市民権を得ています。

●そうした独得な思考回路によって生まれた造語もひっくるめてインプットすることで、ただ「文体」だけを模写するのとはまた違い、クリエイティブな「ものの見方」まで乗り移ってくるわけです。

●「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」「白痴」「悪霊」「未成年」の5大長編はいずれも、人生の課題図書と言ってもいいでしょう。

●私は毎年、学生に「カラマーゾフの兄弟」を読んでもらうようにしていますが、読む前と後では語彙の水準がだいぶ変わるのが手に取るようにわかります。

●世界で通用するミステリーは細部まで言葉に対する細やかさが段違い。

●せっかくミステリーを読むなら、世界水準のものも積極的に読んでみてほしいのです。海外ミステリーのトップクラスには世界中の人に謎を投げかける「一流の知」が結集しているわけですから、言葉の研ぎ澄まされ方も相当なものです。

●シェイクスピアの代表的な4、5作を読まないで死ぬなんて、富士山を水に人生を終える静岡県民のようなもの。

●私が好きなのは、新潮文庫「マクベス」の福田恆存訳。

●「気が向いたときだけ」のインプットでは、語彙力には結びつきません。繰り返しになりますが、語彙習得はトレーニングです。継続してトレーニングを続けることではじめて思考体力がつき、たくさんの言葉を身につけられるのです。

●「セレクト音読」。3~4ページ程度を抜粋し、そこだけ繰り返し音読するのです。その部分だけでも音読し、暗唱し、自分のものにすれば、シェイクスピアやニーチェ、ドストエフスキーの語彙が自分に乗り移ってくる感覚が得られます。

●夏目漱石は、日本の語彙を大きく変えた人物です。漱石以前と漱石以後では、日本語の豊かさはまったく違ったものになりました。そのひとつが、言文一致の文章。漱石の書く文章は喋り言葉と非常に近いということで、それまでの文学と一線を画しています。

●夏目漱石の何よりの魅力は表現のうまさにあります。川端康成の文章が美しく芸術的だとしたら、漱石はどちらかというと民衆的。

●以前、芥川賞や谷崎潤一郎賞を受賞されている作家の古井由吉さんと対談させていただいたとき、このようなことをおっしゃっていました。自分が文章を書くときに調子が悪いと、「音痴」だと感じる。それを調整するためには、漱石を音読する。すると、音痴が治るのだ、と。「鴎外ではダメなんですか?」と聞くと、「鴎外の文章はすばらしいけれど、格調高すぎる」とのことでした。

●語彙が豊富であることの条件にひとつ、「漢熟語の語彙が豊かであること」がある。

●語彙は、文脈の中ではじめて活きてくるものです。膨大な語彙も文脈があってこそ、たしかな教養へと姿を変えていくのです。

●少しでも「名比喩」に近づくためには、どうすればいいのでしょうか。聞き手が「いい比喩だな」と感じるのは、映像や音、匂いが頭に浮かぶような描写です。ですから逆に、まずは表現したいイメージを明確に浮かべ、そのイメージを言葉に落とし込んでいきましょう。

●自分が精通している特定の分野に集中して比喩を作り出す試みは、じつはとても効果があるんですね。お酒が好きなら、「ロマネコンティで赤ワイン煮をつくるくらいもったいない話だ」。

目次

第1章 教養は言葉の端々に表れる
第2章 語彙力アップには名著が近道
第3章 テレビやネットでも言葉は磨ける
第4章 8つの訓練で「使える語彙」にする
第5章 洗練された言葉づかいを身につける

Amazonでチェックする